パチンコ店　女店長！聖子の「社会人の青春」店作り　その７「繁盛店①」

おはようございます。

社会人の青春！　蔀（しとみ）晋輔です。

パチンコ店　女店長！聖子の「社会人の青春」店作り　その７「繁盛店①」です。

その６「競合店」はこちら！

喜屋武に駄目出しされた企画書を持って、聖子は森を訪ねて来ていた。
場所は梅田の喫茶店。
その企画書には、新台コーナー、準新台コーナー等、スペック毎にコーナー分けされた店内の機種構成の図・・・・・
おしぼりサービスや貸し傘サービス等の付帯サービス・・・・・
不快感を与えない接客のマニュアル・・・・・
定例的に行なう賞品イベント・・・・・
そういったものが盛り込まれていた。

「・・・・・・・・・・どうですか？」
「全国各地の駅弁を景品で売るって、面白いね！」
「本当ですか！？」
「うん。
　でも、駄目やな・・・・・」
「・・・・・やっぱり。」
「普通なんやな・・・・・
　この企画書に書いてあるのは、この店を出て適当に入った店でもやってるやろ？」
「はい、そうなんです・・・・・」
「これらは、やってて当り前のことで集客するのは難しいな。
　居酒屋さんが店の中を綺麗に掃除します！っていうレベルやな。
　してなかったら、お客さんに不快感を与えて、お客さんを逃がしてしまうけど、それをしてるからって、お客さんは店を選んでくれへんなあ・・・・・」
「確かに・・・・・そうですね・・・・・」
「ちょっと、パチンコ店を見に行こうか。」

言葉をなくしている聖子に、森はそう言うと店から出てタクシーに乗り込んだ。

到着したのは、郊外にある古いパチンコ店であった。
大通りから外れた場所にあり、駅からも遠く、決して立地の良い場所ではない。
店の外観は昭和初期を彷彿とさせる作りで、店内も決して新しく綺麗なものではなかった。
しかし、中に入ると満席状態で、スタッフ達が汗を流しながら動き回っている。

「はいはい！今行きますよ！
　田中さん、最近勝ち過ぎちゃいますか？」

と、お客さんを名前で呼びながら会話をしている。

「聖子ちゃん、この店の二代目社長とは知り合いなんや。」
「そうなんですか。」
「去年、ここから大通りに出たところに、大型チェーン店が出てきたんやけどな。
　全く影響を受けんと、今もこの客入りや。
　自分とこのお客さんを、がっちりとつかんどるんやな。」
「凄いですね。
　その客入りも凄いんですけど、このメインコースの機械・・・・・もう２年前の機械ですよ。
　新・山物語ですけど、今のメインはデラックス山物語やのに・・・・・
　それに、他にも新台がないんですよ。
　あれ！？
　一番新しいのでも、ＣＲ玄太８０ですよ。
　しかも、５台・・・・・
　どうなってるんですか？この店は？」

聖子は目をぱちくりしながら、店内を眺めていた。

ショーケースには、見たこともない賞品が並んでいた。
ハクキンカイロに、それに使用するベンジンにサトウバン・・・・・
昔の駄菓子や、屋台で売っていそうなお面やおもちゃ・・・・・

入口の方に目をやると、杖をついているおじいさんに、スタッフが付き添いながら一緒に
歩いている。
休憩スペースでは、お客さん同士が何やら井戸端会議をしている。
よく見ると、店のスタッフもその中に入って談笑をしている。
店内のＢＧＭも抑え目で、雑音を消すために流れている程度の音量である。

そうこうしている内に、森に手招きされて行ってみると、森は店の外を指差した。
その方向を見てみると、若い男性が運転席から下りて、後部座席のドアを開けていた。
車から出てきたのは、６０歳くらいのおばあさんだった。
ひょっとして、あのおばあさんが社長！？と思っていると、その二人が店内に入って来た。

「ああ、助かったわ。
　今日はお父ちゃんがおらんかったから、来られへんかと思てたけど。
　部長が来てくれたから来れたわ。
　帰りはお父ちゃんが迎えに来てくれるから、大丈夫やからね。
　おおきに、ありがとう！」
「良かったですわ。
　ゆっくり、遊んでいって下さいね。」
「おおきに！おおきに！」

社長かと思った女性はこの店の常連客で、案内をしてきたのはこの会社の部長であった。
聖子は言葉が見つからず、ただ、その光景を見つめていた。

（つづく）

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